取り組んだ内容
【取組(1)】 Ⅰ.働き方・休み方改善 |
2 勤務負担軽減 |
その他の情報通信機器を活用した業務効率化・省力化を推進している |
「総合滅菌管理システム」導入による手術の安全性向上と看護師らの業務改善 |
【取組(2)】 Ⅰ.働き方・休み方改善 |
2 勤務負担軽減 |
チーム医療や多職種連携(業務分担・連携の強化等)により負担軽減を図っている |
滅菌管理部、手術部の再整備による連携強化 |
【取組(3)】 Ⅰ.働き方・休み方改善 |
2 勤務負担軽減 |
電子カルテを活用した業務効率化・省力化に取り組んでいる |
電子カルテ内の手術管理情報を連動させたスマートフォンと総合滅菌管理システムの連携 |
【取組(4)】 Ⅴ.その他 |
器械マスタ情報の標準化 |
GS1識別コードを取得による手術用器械の一括管理 |
取組のきっかけ、背景、取組前の問題点
・滅菌管理部は手術で使う器械の滅菌や準備を担います。医療器械は複雑であるため、専門性が高く、業務に必要な専門的技能を習得するには、かなりの知識と経験が必要でした。その一方でスタッフの定着率の低迷が課題でした。
・システム導入前は写真資料を基に目視で確認しながら手術ごとに器具を確認していたため、手術で使用するセットメニュー内容の変更があるとその都度写真資料を作り直す作業が必要でした。使用頻度が低いなど特に経験豊富なスタッフでないと組み立てが難しい器械や新人看護師では器械名だけでは判別できず、術前術後のカウントミスが発生することもありました。このように器械セットの組立は多くの時間がかかる複雑な作業であり、器具の名前や形状の違いなどを見分けられる熟練者に負担がかかっていました。
・手術部看護師は、手術件数の増加、在院日数の短縮化、手術準備や調整、緊急手術、追加手術への対応に追われて、業務量が増加しており、業務の効率化が喫緊の課題でした。
・医師によって器械の呼び名が違う、準備手順が統一されていない、緊急手術時に器械がどこにあるかを探し回るなど、滅菌管理部と手術部間の垣根が存在していました。
取組対象
- 取組対象
看護職
- 取組の中心部署・人物
滅菌管理部
手術部看護師
- 取組詳細
①滅菌管理部、手術部の再整備
・2014年の新棟への移転を契機に、滅菌管理部と手術部を隣接させて連携を強化しました
☞滅菌管理部に洗浄、滅菌装置を集約・管理し、滅菌器材と不潔器材のゾーン分けを行い、手術器材が一方向に流れて処理できるようにしました。・短時間で確実な効果が得られる機器を増やし、医療器材を安全かつ確実に供給できるようにしました。
②器械の名称・規格の統一、セット名称・表示の統一による情報の共有化
・手術器械の名称・規格の統一
☞同一器械でも、術式によって名称が異なっているなど、院内で統一されていなかった名称・規格を統一しました。
*肝切で使用している「サテンスキー」はPD追加で使用している「血管鉗子」と同一器械だったということが分かりました。・セット名称・表示の統一
☞コンテナ・洗浄バスケットの表示とセットメニュー表などのセット名称を統一し、システムのマスタ情報と関連付けました。
*セット名称 セット品:2種類以上の鋼製小物の集まり、同じ名称の鋼製小物でも規格が異なる場合はセットとする。 単品:1種類以上の鋼製小物、数本単位でも単品とする。☞用語の定義を明確にし、使用する用語を統一、両部のスタッフ間で共通認識を形成しました。
③総合滅菌管理システムの導入
・IoT(Internet of Things)を洗浄滅菌機器などに応用して、稼働状況のリアルタイム収集と手術器具のGS1個体識別コードを関連付けた手術器具のトレーサビリティ(履歴追跡)の管理、器械の立体保管機能を備えた一元管理システムを国内初で導入しました。・手術器材の使用頻度や在庫状況を管理できることで余剰在庫の低減を図り、ムダな経費の節減につながる経済的効果も期待できます。
➃総合滅菌管理システムの活用ー識別コードの登録による器械マスタ情報の標準化ー
・国内3施設目となる附属病院のGS1事業者コードを取得し、鋼製小物約3万点に個体識別用2次元コードをレーザで刻印、システムに登録することで、資産管理やトレーサビリティ、体内遺残防止の確保につなげます。・GS1識別コードを読込むことで、術後カウントのWチェックをシステムで管理することが可能となり、速やかで確実なカウントの実現、秒単位で作業者別の読込履歴が残るため、体内遺残の早期発見、器械の紛失防止につながります。・器械積載情報をシステムに登録することで、洗浄、滅菌プログラムの選択ミスを防止、器械の損傷、劣化防止につながります
実施後の成果
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果 | ||
1 労働時間管理 成果 | ||
時間外労働時間数が減っている | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 【取組(4)】 | |
成果指標 | 滅菌管理部ー労働時間の削減ー ・手術1件の器械組立に要する時間が、全診療科平均で2015年の566.3秒から2017年は312.8秒となり、253.5秒の削減につながりました。
・手術器械の組立ミスの発生率が2015年から2018年で60%減少しました。
・手術件数が2割以上増加したものの、総超過勤務時間は2015年1,000時間から2018年には200時間と80%減少しました。 手術部ー業務負担の軽減ー ・手術準備完了、未完了についてスタッフが持つスマートフォンや大型表示パネルで把握できるようになり、従来は手術予定2日前行ってた準備が前日でも可能になりました。
・識別コードが刻印され、システムに登録されたことで、器械マスタ情報の標準化が実現しました。その結果、滅菌された製品のバーコードを読み取るだけで知識がない人でも手術用器械の準備が可能となり、手術周辺業務については病院外部へのアウトソースが実現しました。
・手術器械の位置情報によって、看護師1名でも器械準備業務の確認が可能となり、緊急、追加手術への対応はアウトソースでも可能となりました。 |
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果 | ||
1 労働時間管理 成果 | ||
緊急時における器械準備の迅速化 | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 【取組(4)】 | |
成果指標 | 緊急手術・急な術式変更時の器械準備の迅速化 ・準備カートに備え付けられている位置センサーと受診アンテナによって、必要な器械の位置情報の把握が可能になりました。
・装置の稼働状況、手術カート、器械の位置、再処理の状況(洗浄中、組立待ち、滅菌中など)をリアルタイムに確認できるため、器械を探しまわる必要がなくなり、急な変更にも迅速に対応することが可能になりました。 |
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果 | ||
2 勤務負担軽減 成果 | ||
・看護師業務の一部アウトソーシング | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 | |
成果指標 | アウトソーシングによるワークフローの改善 ・システムの導入により、滅菌管理部の業務フローは、不潔器械回収後から洗浄~滅菌判定までとして、保管~回収は病院外部へのアウトソーシングが実現しました。それに伴い、手術部看護師の大幅な業務負担軽減につながりました。
ワークフロー図手術準備作業(ピッキング)→手術→回収→≪回収Wチェック→洗浄→セット組→滅菌≫→保管 |
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果 | ||
2 勤務負担軽減 成果 | ||
セット組立作業の標準化 | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(4)】 | |
成果指標 | セット組立作業の標準化 ・システムに登録されたGS1識別コードにより、画像支援を受けることで、器械セット組立の時には自動的に詳細な画像を確認することができ、専門的な知識や経験がなくても組立作業が可能となり、組立ミスの減少と時間短縮につながりました。
・多方面からの画像が映し出されるため、熟練者でなくても器械の違いが分かりやすく、全ての器械が揃わないと組立が完了しない仕組みとなっており、違うセットの器械だと、エラーメッセージが表示されるため組立ミスがなくなりました。 |
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果 | ||
2 勤務負担軽減 成果 | ||
IoTを利用した業務負担軽減 | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 【取組(3)】 【取組(4)】 | |
成果指標 | ICTとスマートフォン、IoT技術と標準化されたマスタ情報との連携 ・電子カルテ内の手術管理情報を連動させたスマートフォンを操作することで、総合滅菌管理システム内で手術器械のピッキング・照合が可能になりました。それにより、器械名が分からない人でもピッキングが可能となり、作業が効率化されました。
・手術の事前準備に不足している器械があった場合は、その器械の情報を取得して洗浄やセット組、滅菌作業を優先して行うなど、効率的にタイムリーに行うことができるようになりました。
・IoTの活用と器械マスタ情報の標準化により、手術周辺業務のアウトソーシングが可能となり、手術部看護師のワークフローの大幅な改善につながりました。
・器械が一元管理できたことで、適正な在庫管理が可能となり、不要経費が約120万円削減できました。
・器械の一元管理により、器械のリコール宣言に対してもスピーディーに対応することができ、感染症拡大リスクを軽減することができました。 |
これまでの取組成果に対する院内の声・反応
手術部看護師の声
・システム導入前は手術準備や片付けなど手術周辺業務に時間がとられていたが、導入により業務が整理・効率化され、手術により専念できて、患者ケアに時間が使えるになりました。
・今後は手術前の患者訪問にも力を入れていきたいと思います。
滅菌管理部の声
・セット組立の作業が容易になることで、滅菌管理業務の知識・技術習得へモチベーションがスタッフ間で高まりました。
・現在では、滅菌技師認定資格を6名が取得しています。
今後の課題等について
・国際規格のGS1標準で手術器械を管理したシステムの導入が全国に広がることで、大規模災害時に被災地の病院に手術コンテナを送る医療支援が可能となります。今後もさらに地域医療へ貢献していきたいと思います。
・総合滅菌管理システムを多くの医療機関に知ってもらい、業務改善は人件費の減少につながること、他職種連携は医療の安全性にも大きく期待できることを理解してもらいたいと思います。
取組・提案者概要
- 取組者
- 病院単体での取組
- 法人名
- 福井大学
- 病院名
- 医学部附属病院
- 法人(病院)の開設主体
- 国等(厚労省、国立病院機構、国立大学法人、労働者健康安全機構、国立高度専門医療研究センター、地域医療機能推進機構、その他国の機関)
- 所在地
- 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
- 主たる医療機能の特徴
- 高度急性期機能
- 一般病床
- 病床数: 559
- 入院基本料:7対1
- 療養病床
- 病床数:
- 入院基本料:
- 結核病床
- 病床数:
- 入院基本料:
- 精神病床
- 病床数: 41
- 入院基本料:13対1
- その他病床
- 病床名:
- 病床数:
- 入院基本料:
- 一日あたりの平均外来患者数
- 1436人(令和1年度数値)
- 一日あたりの平均在院患者数
- 529人(令和1年度数値)
- 一般病棟の平均在院日数
- 11.9日(令和1年度数値)
- 病床稼働率
- 88.2%(令和1年度数値)
- 職員総数
- 1538人(令和1年度数値)
- 医師
- 409人
- 看護職
- 772人
- 医師事務作業補助者
- 47人
- 看護補助者
- 40人
- 医師の交代制勤務の有無
- あり
- 看護師の交代勤務の状況
- 3交代制と2交代のミックス(同一病棟内)
- 勤務環境改善についての表彰・認定等について
-
「MCPC award 2019」 グランプリ/総務大臣賞/モバイルテクノロジー賞受賞
看護業務の効率化 先進事例アワード2019 特別賞受賞