取り組んだ内容
【取組(1)】 Ⅰ.働き方・休み方改善 |
1 労働時間管理 |
時間外労働時間の削減に取り組んでいる |
【取組(2)】 Ⅳ.働きがいの向上 |
1 キャリア形成支援 |
正規・非正規を問わずすべての職員のキャリア形成支援(研修等に関する情報提供や研修等への職員参加の支援、子育て等と両立しながらの勤務の継続に関する相談窓口の設置や情報提供等)が実施されている |
取組のきっかけ、背景、取組前の問題点
・看護職員の既婚者と未婚者の比率が7:3で、夜勤制限者や産休・育休者が年々増加していた。これは、多様な勤務形態を導入したことが勤務制限者の増加を招き、各部署の勤務表作成は苦慮することとなった。また、看護師1名で複数の患者を受け持つ固定チームナーシングでは、アクシデント発生のリスクが高いなど自己完結の看護体制に限界を感じていた。さらに、時間外勤務時間が増加し、看護管理者が労務管理について十分な知識をもっておらず、適正な勤務管理がなされていなかった。
・これらの課題解決を目標に、日本看護協会が実施している「ワーク・ライフ・バランス推進ワークショップ」と石川県事業である「多様な勤務形態導入促進事業」に取り組んだ。
取組対象
- 取組対象
看護職
- 取組の中心部署・人物
・まず推進委員会で、推進チーム活動を広報する、正循環勤務体制に近づける、PNS(パートナーシップナーシングシステム)導入を検討する、適切な労働時間管理を行う、新たな人事考課システムを構築する、の5つのアクションプランを作成した。
・次いでWLB推進チームを発足した。その際に、病院長からチーム会辞令交付があり、これが病院全体での取組であるという意識を高めた。
- 取組詳細
・初年度のインデックス調査では、「看護職員を大切にする組織である」「現在の仕事は自分の描く将来像につながる仕事である」「現在の働き方に満足している」の問いに対して、そう思っている人の割合が50%を下回る結果となった。そこで、3年後の目標として『一人ひとりのライフステージを尊重したお互い様意識のある環境・風土の組織に成長し、「働きたい」「働き続けたい」職場になっている』をかかげ、この3つの調査項目について良い評価の割合が前回を上回ることを成果指標として取り組んできた。
・WLBの取組は子育て世代だけが対象ではなく、全ての人が対象となることを伝える必要があり、また、看護職員だけでなく病院全体の取組として浸透していく風土づくりが必要である。
・2年目には、育児休暇明けのスタッフへ育児短時間勤務の働き方を提示。毎年実施する働き方調査結果では、「勤務制限なし」や「夜勤可能」の割合が増加し、育児休暇明けのスタッフの働き方に変化がみられた。
・十分な休息がとれないまま次の勤務に出てくるなどでの疲労蓄積は、アクシデントの発生にもつながる。十分な休息時間がとれる「正循環」の勤務に近づけるよう、2交代制勤務の導入を検討した。1年目には、2つの病棟において2交代制勤務を導入し、十分休みがとれた等継続したいという評価が得られた。しかし、2年目に正循環勤務の提示をしたが好ましくないとの評価があり浸透していない。長日勤スタッフの負担感があり、交代時間や休憩時間等の検討が必要である。
・各勤務帯の安全確保を強化するため、PNS導入を検討した。1年目は2つの病棟でPNS導入の検討を開始し、指示受けに対する負担感が軽減したとの評価が得られ、2年目では4つの病棟で検討を開始。3年目には7つの病棟で検討が開始されており、3年間のインシデント報告件数を比較すると、レベル0(=気づき)件数が増加傾向・レベル1~3(判断を怠った)が減少した。これは、PNS導入を検討し、日勤ペア体制をとった成果と考えるが、看護提供方式については今後も検討が必要である。
・時間外勤務の状況を把握し、適切な労働時間管理ができる体制づくりをめざし、取り組んだ。1年目には、打刻と実際の帰宅時間のかい離について調査し、時間外勤務理由を明確化した。2年目は、院内の委員会等を時間内に変更し、学習会などを開催した。意識的に定時帰宅できるような仕掛けづくりを検討し、3年目から月2回のノー残業デイを設定した。
・自律した看護師を育成するために人事考課制度・クリニカルラダーを活用した教育体系の見直し、人事システムの構築をめざした。1年目は先駆的取組施設を視察し、院内講演会を開催。2年目は新人事考課制度の導入し、医師以外の全職員の共通ラダーの運用を開始した。しかし、共通ラダーだけでは専門職としての評価ができないため、3年目には看護局において、専門職としての教育計画の立案、ライフケアワーカー(介護福祉士)のキャリア段位制度の活用などに取り組んだ。
実施後の成果
Ⅲ.働きやすさ確保のための環境整備_成果 | ||
4 人材の定着化 成果 | ||
・「職務制限なし」「夜勤可能」の割合が増加し、育児休暇明けのスタッフの働き方に変化が見られた | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 | |
成果指標 |
Ⅴ.その他_成果 | ||
・院内全体の取組として開始したことで、他部署と連携し活動することができた・日勤ペア体制をとったことで、インシデント発生要因の改善につながった | ||
成果の出た対象 | ☐医師,☐コメディカル,☑看護職 | |
成果に影響を与えた取組 | 【取組(1)】 【取組(2)】 | |
成果指標 |
これまでの取組成果に対する院内の声・反応
実施後の成果や見えてきた課題
取り組みの成果:今年度のインデックス調査では、「看護職員を大切にする組織である」は50%を占め、「現在の仕事は自分の描く将来像に繋がる仕事である」は41%、「現在の働き方に満足している」は49%がそう思うと答えており、全体の割合が50%を下回る結果となった。
【正循環勤務体制に近づける】
現在は一病棟のみ2交代制を導入している。長日勤スタッフの負担感や正循環勤務の目的が周知されておらず、「損した休み」と捉えられているのが現状である。そのため、なかなか実践できない。交代時間や休憩時間等の検討が必要である。
【PNSを導入する】
2014年からPNSの導入を試みた。新人看護師とはPNSで得たパートナー体制を活かし、現在は固定チームナーシング看護提供方式で、患者に責任を持って継続した質の高い看護を実践できるよう取り組んでいる。さらに、リーダーシップ、メンバーシップでスタッフ育成を目指している。固定チームナーシングのマニュアルを見直し、全スタッフに周知、浸透する働きかけが必要である。
【適切な労働時間管理を行う】
2019年4月からの働き方改革をきっかけに、当院でも看護管理者が中心となり、ヘルシーワークプレイスを推進する勤務環境改善に向け取り組んでいる。特に時間外勤務の多い管理者の現状把握を行ったが、要因として記録や時間外の病状説明や指示出しが多く占めていた。今後医師や家族の理解を得ながら、時間内に行われるよう働きかける必要がある。
また各病棟ではそれぞれの特性を考えた業務改善が行われている。その取り組みの中で、「働きやすい」環境づくりだけではなく、「働きがい」の両方を考えていく必要があると評価している。さらに有給休暇の取得など「働き方改革」を総合的に推進するため、職場でルールを見直し、法律に準拠した適切な労働時間・休日等の管理を行う必要がある。
今後の課題等について
・インデックス調査の結果を開示する場や広報活動を意図的に作る必要性も得られた。
・今後は、病院全体として、インデックス調査の結果の開示とWLBに関する取組みを院内に広報することや、定期的な業務量調査と適切な労働時間管理を行うことで時間外勤務の減少をめざす。
・看護局としては、固定チームナーシングとPNSの2つの看護提供方式の検討と2交代制勤務導入の評価を行う。
取組・提案者概要
- 取組者
- 病院単体での取組
- 法人名
- 医療法人社団 和楽仁
- 病院名
- 芳珠記念病院
- 法人(病院)の開設主体
- 医療法人
- 所在地
- 石川県能美市緑が丘11丁目71番地
- 主たる医療機能の特徴
- 一般病床
- 病床数: 200
- 入院基本料:
- 療養病床
- 病床数: 120
- 入院基本料:
- 結核病床
- 病床数:
- 入院基本料:
- 精神病床
- 病床数:
- 入院基本料:
- その他病床
- 病床名:
- 病床数:
- 入院基本料:
- 一日あたりの平均外来患者数
- 524.8人(平成29年度数値)
- 一日あたりの平均在院患者数
- 248.2人(平成29年度数値)
- 一般病棟の平均在院日数
- 22.4日(平成29年度数値)
- 病床稼働率
- 85.6%(平成29年度数値)
- 職員総数
- 502人(平成29年度数値)
- 医師
- 37人
- 看護職
- 200人
- 医師事務作業補助者
- 14人
- 看護補助者
- 53人
- 医師の交代制勤務の有無
- なし
- 看護師の交代勤務の状況
- 3交代制(変則含),3交代制と2交代のミックス(同一病棟内),オンコール体制
- 勤務環境改善についての表彰・認定等について
-
平成27年8月 プラチナくるみん取得
平成28年5月 公益社団法人日本看護協会 カンゴサウルス賞受賞